いったい、動物の手術ってどんなふうに行われているの?
と気にされておられる方も多いと思います。そこで、当院の手術の様子を写真で紹介してみます。
人間と同様に手術が行われていることが、分かって頂けるとおもいます
手術は突然実施できるものではありません。まずは診察をして、手術が行える状態でるかをチェックします。事前に必要な情報を得るため、体重・体温測定や聴診・触診・視診などの全身状態のチェックや血液検査を含めた術前検査を行う必要があります。当院では避妊手術の場合は子宮と卵巣、去勢手術は精巣を摘出します。その他、手術の術式や手順についてご不明点などがあれば、診察室でご説明いたします。ここでは犬の避妊手術を例に挙げて、手術の流れをご説明いたします。
麻酔薬、医療機器の開発が進み、安全な麻酔や手術が行えるようにはなってきましたが、未だに麻酔事故は0.01%の確率で発生すると言われています。そのために当院では手術前に以下の検査を実施し、できる限り安全性の高い手術を行えるように万全の準備で臨んでいます。
血液中の赤血球、白血球、血小板の数やヘモグロビン量を検査し、貧血や炎症などが起こっていないか全身状態を評価します。
臓器に関する検査です。肝臓や腎臓などの臓器が麻酔をかける際に、問題がないかを検査します。
血友病などの先天的な病気で血が止まらない場合や血液の凝固機能に異常があると手術後に出血のコントロールが出来なくなり、大変危険です。このような事態に陥らないためにも、凝固機能に異常がないかを事前に検査します。
この他、高齢動物は加齢に伴う心肺機能の異常がないかをチェックするために胸部レントゲン、心電図検査を行います。検査結果が良好であれば手術の日程を入れていただきます
全身麻酔をかけますので前日の夜から当日の朝までは食餌・飲水などの制限が必要になります。当院スタッフからご留意いただきたい事項についてご連絡を入れさせていただいています。
午前中にお預かりをして、手術開始までに当日の健康状態(体温・体重・心拍数など)を確認します。
肢の静脈血管内に留置針という細いチューブの付いたプラグを留め置くことで手術前・手術中に流す点滴や、静脈に入れる注射薬の経路を確保します。高齢動物に対しては血圧を維持するために手術前から点滴を開始します。
気管チューブの挿管。気管チューブという管を喉に入れるために、麻酔導入薬を使用して動物を眠らせます。
気管チューブが入ったら速やかに手術室に移動し麻酔器に連結し、ガス麻酔で維持します。
感染予防や皮膚の消毒のために切開部のみでなく、その周囲もく毛刈りします。
消毒は広範囲の微生物に対して殺菌能力を持つクロルヘキシジンを使用します。
執刀医、助手、麻酔管理者の他、機器の準備や術衣を着せるなどの周囲の仕事をする補助者で手術を行います。
執刀医、助手が身に着ける物や器具類も全て滅菌されたものを使用します。
手術中は保温マットを使用し、体温低下に備えます。
心拍数・血圧・呼吸数・血中酸素飽和度(動脈血中の酸素濃度)・呼気終末炭酸ガス濃度(呼気中の二酸化炭素濃度)・麻酔濃度をモニタリングし、麻酔管理者が常に監視しています。
また、電気メス等を用いることにより出血のコントロールや手術時間の短縮を図り、正確・丁寧かつ迅速に動物に負担をかけない施術を行えるよう心がけています。
手術後は集中治療室(ICU)に移動します。麻酔後は体温が低下しているので、ICUにて保温、通常よりも濃い酸素の状態で観察します。
麻酔から完全に覚めて顔をあげ、体を起こすようになったらエリザベスカラーを首に装着します。これは舐めて傷口が開いたり、手術層への口中の雑菌侵入や糸を噛み切るといった事態を防ぐためです。
手術後もお迎えまで点滴を流し、ICUで過ごします。顔つきや動きもしっかりとして、状態が安定していれば当日の夜にはお家へ帰れます。
退院してから状態が悪くなった場合、すぐに処置が行えるように肢の留置針は装着したままお返しします。
翌日は身体状態と傷口チェックのために午前の診療時間中に来院していただきます。
状態が良ければ、肢の留置針は取って3日後の再診になります。食欲がないなど、状態が不完全の場合は、お預かりをして点滴などの治療を行います。
退院から3日後に再度、身体状態と傷口チェックに来院していただきます。
ここまでの間に特に問題がなければ、手術からおよそ1週間から10日後に抜糸を行うために来院していただきます。抜糸が終了すればエリザベスカラーも外れます。
以上で終了となります。
おつかれさま!!